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血尿の原因について

① 血尿とは?

文字通り、尿の中に血が混じっている状態が「血尿」です。血尿は大きく分けると、「顕微鏡的血尿」と「肉眼的血尿」に分類されます。健診などで尿中に血液のもとである赤血球が増えているのを指摘された場合を「顕微鏡的血尿」、自分でトイレで排尿した際に尿に血が混じっている場合を「肉眼的血尿」と言います。試験紙を用いた尿検査で尿潜血を指摘されることがありますが、これは正確には「血尿」とは言いません。尿潜血陽性と言われても、本当に血が混じっているかどうかは「尿沈渣」と呼ばれる精密検査で調べてみないとわかりません。尿潜血を指摘されて泌尿器科に受診される方は多いですが、必ず「尿沈渣」検査をおこなって、本当に血液が混じっているのかを調べることが重要です。

② 血尿の原因は?

血尿の原因は数多くあります。泌尿器科の病気では、尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石)、尿路感染症(膀胱炎、前立腺炎など)、悪性腫瘍(膀胱がん、尿管がん、腎盂がんなど)などで血尿が生じることがあります。また交通事故やスポーツ中の腎臓部の外傷で血尿が起きることがあります。一方、腎臓病の前兆で血尿が出ることがあります。その場合は蛋白尿が出たり、尿中に赤血球円柱と言われる結晶が見つかることが多いのが特徴です。

③ 「顕微鏡的血尿」を指摘された場合~尿沈渣による正確な診断を

 顕微鏡的血尿は、健診を受けた方の2~31%にみとめるとされており、比較的高頻度で指摘されます。皆様の中でも健診で顕微鏡的血尿を指摘された方も多いのではないでしょうか。顕微鏡的血尿は、「尿沈渣」とよばれる尿検査で、顕微鏡をのぞいた時に一つの視野に5 個 以上赤血球とよばれる細胞が見つかった場合と定義されています。健診でよく行われている「尿潜血検査」では、本当は血液が出ていないのに陽性になってしまう「偽陽性」や血尿が出ているのに陰性となる「偽陰性」が存在しており、尿潜血陽性を言われた方は、必ず尿沈渣で赤血球が本当に増えているのかを調べる必要があります。

血尿を指摘された場合に、もっとも注意が必要な病気は「膀胱がん」「腎盂尿管がん」です(膀胱がんについて詳しくはこちら)。顕微鏡的血尿を指摘された方を調べた結果、膀胱がんが見つかったのは2.6%と報告されています(Davis R et al. AUA GUIDELINE, 2012)。すなわち、顕微鏡的血尿で泌尿器科を受診した患者さん100人中、膀胱がんが発見されるのは約2人という計算になります。したがって膀胱がんが見つかる可能性は決して高くはありませんので多くの場合心配いりませんが、決して無視してよい頻度ではありません。顕微鏡的血尿を指摘された場合には、必ず膀胱がんや腎盂尿管がんの有無を調べる検査を行うことが大切です。

 

健診で尿潜血や顕微鏡的血尿を指摘された場合には、原因を調べるために通常下記の検査を行います。

①尿定性検査、尿沈渣検査

尿定性検査で蛋白尿の有無を調べます。また尿沈渣検査で本当に尿中に血液が混じっているか、また膀胱炎など尿路感染症の有無を調べます。

②尿細胞診検査

尿中に「がん」細胞が存在しているかを調べます(結果が出るまで1週間程度かかります)。

③腹部超音波検査

腎臓、膀胱などの尿路に異常(腫瘍、結石など)がないか調べます。

これらの検査を行い、明らかな異常が無い場合には、経過観察とすることが多いですが、喫煙歴や骨盤への放射線治療歴など膀胱がんの危険因子がある場合や、尿沈渣で尿中赤血球の数が多い場合には、2-3か月後に再検査を勧める場合があります。

一方、尿検査で尿路感染症が疑われる場合には、「尿培養検査」とよばれる細菌検査を行い、膀胱炎症状(排尿時痛など)がある場合には抗生物質での治療を開始します。また肉眼的血尿ではなくても、尿沈渣で尿中赤血球の数が多い場合には、CT検査や膀胱鏡検査(膀胱内を調べるカメラ)を行い、詳しく調べることがあります。尿蛋白を認める場合には、血液検査を行い、腎臓病(IgA腎症、糸球体腎炎など)の有無を調べる必要があります。

④ 「肉眼的血尿」をみとめた場合~症状が無い場合は特に注意!!

肉眼的血尿が出た場合には泌尿器科の病気が見つかることが多く、速やかに泌尿器科を受診することをお勧めいたします。肉眼的血尿は、何かしらの症状を伴う「症候性肉眼的血尿」と、何も症状をともなわない「無症候性肉眼的血尿」に分けられます。また、血尿の出るタイミングによって出血している部位の予測が可能です。例えば排尿の最初に血が混じる場合には尿道や男性の場合前立腺からの出血を疑いますし、排尿の最後(終末時)に血尿が出る場合には膀胱頸部(膀胱の出口)からの出血を疑います。排尿全体を通して血尿が出る場合には、膀胱、腎盂、尿管からの出血が疑われます。

肉眼的血尿をみとめた場合には、顕微鏡的血尿の場合と異なり、詳しい検査を行う必要があります。肉眼的血尿が出た場合に調べるべき病気として、膀胱がんや腎盂尿管がん、腎がん、前立腺がんに加え、膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染症、尿路結石症(腎結石、尿管結石、膀胱結石)、前立腺肥大症、腎動静脈奇形(腎臓の血管の異常)、腎血管筋脂肪腫などが挙げられます。一般的に症状をともなう「症候性肉眼的血尿」の場合には、尿路感染症や尿路結石症などが原因のことが多く、「無症候性肉眼的血尿」の場合には、膀胱がんなどの悪性腫瘍の可能性が上がると言われています。脳梗塞や心筋梗塞などの既往があって血液をサラサラにする抗血小板薬や抗凝固薬を内服している患者さんに肉眼的血尿がでることがありますが、抗血小板薬や抗凝固薬を内服しても血尿の頻度は必ずしも増加しないことが知られており、かならず放置せず原因を調べることが必要です。

 

肉眼的血尿(特に無症候性肉眼的血尿)を自覚された患者さんには、原因を調べるために通常下記の検査を行います(すべての方に下記検査を行うわけではありません。尿検査で膀胱炎など原因が明らかな場合には、まずは病気の治療を行います。膀胱炎を治療した後も血尿が続く場合や、あるいは抗生物質で治療しても膀胱炎が治らない、膀胱炎の症状がとれない場合には、悪性腫瘍を含めた精密検査が必要です)。

①尿定性検査、尿沈渣検査

尿定性検査で蛋白尿の有無を調べます。また尿沈渣検査で本当に尿中に血液が混じっているか、また膀胱炎など尿路感染症の有無を調べます。

②尿細胞診検査

尿中に「がん」細胞が存在しているかを調べます(結果が出るまで1週間程度かかります)。

③腹部超音波検査

腎臓、膀胱などの尿路に異常(腫瘍、結石など)がないか調べます。男性の場合、前立腺肥大症の有無を調べることが可能です(前立腺肥大症について詳しくはこちら)

④CT検査

時に造影剤とよばれる薬を注射して尿路の精密検査を行います。腎血管の異常や尿管の異常を調べるのに適しています。

⑤膀胱鏡検査

尿道、膀胱をカメラで観察する検査です。当院では細くやわらかい軟性膀胱鏡を導入していますので、通常痛みは軽度です。膀胱内を調べるためには最も確実な検査です。腎臓や尿管内まで観察することはできませんが、時に腎臓で作られた尿が膀胱内に流れてくる“尿管口”と呼ばれる穴から血尿が出てくるのが見えることがあり、出血部位を特定できることがあります。血尿が濃く持続している場合には視界が不明確になるため行わないこともあります。

⑥PSA検査(血液検査)

男性の場合、前立腺から出血し「肉眼的血尿」を自覚することがあります。前立腺はもともと血管がたくさん存在している臓器であり、特に前立腺肥大症がある方は排尿時のストレス(圧力)が原因で血管が破綻し出血することがあります。また前立腺がんが原因となって血尿が出ることもあります。したがって、健診などで前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAを測定していない50歳以上の患者さんには、PSA検査を行い前立腺がんの可能性を調べることをお勧めいたします (PSA検査について詳しくはこちら)

⑤ 血尿をきたすその他の病気

泌尿器科で先述した精密検査を行っても、血尿の原因がつかめないことがあります。そのような場合を総称して「特発性腎出血」と呼びます。「特発性腎出血」の原因としては、自律神経異常、腎低酸素症、腎血管異常による出血、腎炎、アレルギー、血液凝固能異常による出血などが推定されていますが、原因を特定することは極めて困難です。特発性腎出血をきたす病気の中で、左腎静脈(左腎臓の太い静脈)が腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に挟まれ、左腎静脈が圧迫されることで左腎臓内に血液が過剰に貯留し腎臓内の微小な血管が破れて血尿を生じる病気があります。この病気、現象をナットクラッカー(クルミ割り)現象またはナットクラッカー症候群(nutcracker phenomenon あるいは nutcracker syndrome)と呼びます。ナットクラッカー現象はCT検査で発見されることが多く、特に内臓脂肪が少ない痩せ型の女性に多いと言われています。

⑥ 血尿の治療について

これまで述べてきたように、血尿の原因は様々であり、その原因によって治療法は様々です。顕微鏡的血尿の場合には、悪性腫瘍など重大な病気がなければ特に治療は不要です。肉眼的血尿が出た場合でも、よほど真っ赤な血尿が続かない限りは貧血になることはありません。尿路感染症がある場合には抗生物質の治療で完治すれば血尿は消失します。肉眼的血尿の原因が膀胱がんなど悪性腫瘍であれば通常手術治療が必要ですので早期に適切な医療施設に紹介させていただきます。尿路結石が原因の場合には、結石が排石すれば通常血尿はおさまりますが、大きな結石の場合には手術治療を含め治療の必要性を適切に判断させていただきます。前立腺肥大からの出血の場合には、前立腺肥大症の治療に準じて飲み薬を開始したり、前立腺を縮小させる薬や止血剤を飲むことでおさまることがあります。

もっとも困るのが原因不明の特発性腎出血です。原因がわからない腎臓からの出血は、多くの場合自然に止まりますが、極めて稀に真っ赤な血尿が持続することがあります。血尿が重度で貧血が起きるような場合には、内視鏡での手術や、血管塞栓術などが必要になる場合もありますので、迅速に最適な方針を決定させていただきます。

健診で尿潜血や顕微鏡的血尿を指摘された方、目で見える血尿(肉眼的血尿)を自覚された方は、かならず泌尿器科を受診し精密検査を受けることをお勧めいたします。「中野駅前ごんどう泌尿器科」では適切な検査を行い、血尿の原因を調べることが可能です。お気軽にご相談ください。

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