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膀胱がん

① 膀胱がんとは?

膀胱は、腎臓で作られた尿をためる臓器です。下腹部に位置しており、恥骨と呼ばれる骨の奥に位置しています。



膀胱の内側にある、尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生した悪性腫瘍のことを「膀胱がん」といいます。年間、人口10万人あたり約7人が膀胱がんと診断され、男性が女性の4倍の多いと言われています。「膀胱がん」と診断された人の95%以上が45歳以上で、80%が65歳以上であることから高齢者に発生しやすい「がん」と言えますが、稀に30歳代で膀胱がんが見つかることもあります。

② 膀胱がんの危険因子~喫煙は最大の原因!

「喫煙」は膀胱がんの最大の危険因子です。喫煙者は非喫煙者に比較して2.58倍膀胱がんになりやすいとされ、特に現在喫煙している場合は3.47倍で、過去に喫煙していた場合の2.04倍よりも高いといわれています。さらに日本人を対象にした研究でも、喫煙者は非喫煙者よりも約6年早く膀胱がんが発症することがわかりました(Hinotsu et al. Int J Urol 16:2009)。1日の喫煙本数や喫煙年数が増加するほど膀胱がんの罹患リスクは上昇しますが、一方禁煙することは罹患リスクを低下させ、10年以上禁煙すると罹患リスクを2倍以下まで低下させることができます。喫煙は膀胱がん治療後の再発リスクも上昇させることがわかっています。その他、特殊な染料(ナフチルアミン、ベンチジンなど)への職業性曝露や、長期間の膀胱カテーテル留置、膀胱の慢性炎症、放射線の膀胱への被爆も原因と言われています。

③ 膀胱がんの症状は?~「症状の無い血尿」に注意

自覚症状としては、肉眼的血尿でみつかることが最も多く、膀胱がん患者の65%に肉眼的血尿をみとめたと報告されています。一方で「肉眼的血尿」をみとめた方の17%、「顕微鏡的血尿」をみとめた方の4%に膀胱がんが発見されたとの報告があり(Edwards et al. BJU Int 97:2006)、血尿をみとめた際には、膀胱がんを含めた検査が必要です。「肉眼的血尿」は間歇的に繰り返すことが多いですが、1回だけで止まることもあり、血尿が出た場合に放置することは危険です。その他の症状では、膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感など)や、膀胱癌が尿管の出口を閉塞し、腎臓の痛み(腰背部痛)が出現することがあります。膀胱がんが膀胱の出口近くに発生した場合、排尿障害(排尿困難、排尿遷延など)を伴うことがあります。

④ 膀胱がんの診断

膀胱がんの大部分は膀胱の内面をおおっている尿路上皮という粘膜から発生する尿路上皮がんです。できたばかりの早期には粘膜内にとどまっていますが、進行するとともに粘膜下層、筋層、膀胱周囲脂肪組織、膀胱外(前立腺、子宮など)へと浸潤していき、さらにリンパ節、肺、肝臓、骨などへ遠隔転移を起こしていきます。この進行の度合いを病期(ステージ)といいます。

病期(ステージ)はTNM分類が世界的な基準になっています。Tは膀胱がんの根の深さ(深達度)、Nはリンパ節転移の有無、Mは肺・肝臓・骨などへの遠隔転移の有無を表します。

膀胱がんの深達度

Tステージである膀胱がんの深達度(がんの根の深さ)は、CIS(上皮内がん)、Ta、T1、T2、T3、T4と分類されます。そして、がんが粘膜から粘膜下層にとどまっているCIS、Ta、T1を「表在性膀胱がん」、筋層以深に染み込んでいるT2以上の場合を「浸潤性膀胱がん」に大きく二分し、治療法が検討されます。

⑤ 膀胱がんの検査方法

膀胱がんを調べるためには、通常、下記の検査が行われます。

1)尿検査 (尿定性、尿沈渣)

血尿や尿路感染症の有無を調べます。血尿が出た方が尿検査で膀胱炎などの尿路感染症を疑う場合には、まずは感染症の治療を先行します。感染症が治癒したにも関わらず血尿が持続する場合や、抗生剤治療を行っても治らない尿路感染症の場合には、膀胱がんを含めた膀胱異常が無いか、調べる必要があります。

2)尿細胞診

尿の中の細胞を顕微鏡で調べ、“がん細胞”の有無調べます。結果は1~5段階に分かれており、1,2の場合陰性(明らかながん細胞無し)、4,5が陽性(がん細胞が存在する可能性が高い)、3が偽陽性(良悪性判定困難)となります。3(偽陽性)の場合には、再検査を行うことが多いです。尿細胞診の膀胱がんの診断精度は決して高くなく、尿細胞診で膀胱がんの有無を明らかにすることはできません。しかしながら尿細胞診は悪性度が高い(つまり進行が早い悪いがん)膀胱がんの診断能力は比較的高く(陽性率70%、特に上皮内癌の場合80-90%の陽性率)、一方、悪性度の低い(進行が遅い)膀胱がんの陽性率は20%程度と高くありません。尿細胞診で陽性(4あるいは5)であった場合、膀胱を含めた尿路(腎盂、尿管など)のどこかに、がんが存在している可能性が高いと判断します。尿細胞診で陰性であっても、膀胱がんの存在を否定することはできませんので、その他の検査と併せた総合的な診断が重要です。膀胱がんを否定できない場合には、尿細胞診検査を数回行うこともあります。

3)腹部超音波検査(腹部エコー)

放射線被ばくが無く、痛みを伴わないので健康診断や、外来での初期検査でまず行われるのが超音波検査です。膀胱内に突出するような腫瘍であれば超音波検査で診断できますが、時に膀胱結石や血の塊などとの鑑別が困難なことがあります。また膀胱の粘膜表面を這うように広がる上皮内癌は診断が困難です。尿管に腫瘍がある場合に尿の通り道が閉塞し腎臓が腫れる水腎症も診断できます。当院では、受診日当日に超音波検査を実施することができます。

4)膀胱尿道鏡検査(内視鏡検査)

「膀胱がん」の存在を確認するための、最も確実で重要な検査です。膀胱内を直接観察することで、腫瘍と血の塊との鑑別や、超音波で見えない小さな腫瘍の存在もわかります。当院ではやわらかい内視鏡(軟性膀胱鏡)を用いますのでさほど苦痛なく受けることができます。 ただし、検査後に時に血尿や排尿痛、発熱などが起こることがあります。症状の無い無症候性肉眼的血尿で受診した患者さんには、受診日当日に膀胱鏡検査を行わせていただく場合があります。

5)その他の検査

CT検査

肉眼的血尿があり、膀胱内に異常が無い場合、尿の通り道の上流である腎盂、尿管の異常を調べる必要があります。CT検査を行うことで、腎臓~尿管の異常を調べます。
また膀胱がんが見つかった場合には、リンパ節、肺、肝臓などへの転移の有無も調べることができます。

MRI検査

膀胱がんの深達度(がんの根の深さ)を調べるために最も有用な検査です。

骨シンチグラフィー

「がん」の骨への転移を調べることができます。

PET-CT

PET(ペット)CTは、腎盂、尿管、膀胱がんの診断能力は高くなく、診断目的で行うことはありません。しかしながら、リンパ節などへの転移の有無を調べる目的で行うことがあります。

⑥ 膀胱がんの治療方法

膀胱鏡検査で明らかな膀胱腫瘍(がん)が見つかった場合には、腫瘍を切除する手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術 Trans-urethral resection of bladder tumor: TUR-BT)が必要です。TURBTによって、腫瘍が「がん」なのか良性なのか、腫瘍の根の深さ(深達度)の診断、 悪性度(Grade)を確認できます。もし根の浅い表在性のがんであればTUR-BTで完治できる可能性が高いですが、筋肉まで浸潤する筋層浸潤性膀胱がんであれば、内視鏡での完全切除は困難です。この手術は診断と治療を兼ねてほぼ全例に行われます。入院期間は約4-5日程度です。内視鏡で「膀胱がん」が発見された患者さんは、手術を行える適切な医療機関を紹介させていただきます。TURBTで膀胱の筋肉まで浸潤する「筋層浸潤膀胱がん」と診断された場合、あるいは「表在性膀胱がん」であってもBCG膀胱内注入治療が効かない場合には、膀胱をすべて摘出する「膀胱全摘除術」および尿の通り道を変える「尿路変更術」が必要になります。膀胱全摘除術は現在、”手術支援ロボット”をもちいた「ロボット支援下膀胱全摘除術」が普及しており、傷が小さく出血量が少ないため、患者さんの負担が少なく社会復帰を早めることが可能になっています。ロボットをもちいた「ロボット支援下膀胱全摘除術」については、院長の前任地である東京国際大堀病院のホームページに詳細がありますので参考にしてください。

 

〇 膀胱がんが心配、血尿が出た、膀胱がん治療後の経過観察をしたいなど、膀胱がん治療でお困りの方は「ごんどう泌尿器科」にご相談ください。多くの膀胱がん患者さんの治療を経験してきた院長が、適切な検査で診断させていただきます。また、治療にお困りの際には、セカンドオピニオンも受け付けております。お気軽にご相談ください。

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