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尿道炎

クラミジア感染症

クラミジア感染症とは?

クラミジア感染症はクラミジア・トラコマティスと呼ばれる細菌が原因で、目(眼瞼結膜)、尿道、子宮頚管、咽頭などに感染して症状を引き起こす病気です。
すべての性感染症(STD)の中で最も頻度が高いのがクラミジア感染症です。
咽頭(のど)に感染した場合は咽頭痛などの症状が出る場合もありますが、無症状の場合もあり、oral sexなどによって起きるピンポン感染が問題視されています。
尿道や子宮頚管に感染した場合には、分泌物など炎症による症状が軽度であり、自覚症状が乏しいため、病院を受診する機会がなく長期間感染が持続することで、感染を広めることが多いです。
特に女性では子宮頚管炎から骨盤内炎症性疾患を引き起こし重症化することがあり、また男性女性ともに不妊症の原因になり得る恐ろしい病気です。
泌尿器科で主に診るのは、男性に発症する「クラミジア尿道炎」です。クラミジア・トラコマティスが前立腺炎の原因になるか否かはいまだ議論が分かれています。
性器に起こるクラミジア感染症は症状が乏しいため、気が付かないうちにパートナーにうつしてしまうことも多々あります。
20歳代の無症状の若年男性に尿検査を実施したところ、クラミジア・トラコマティスを49%にみとめたとする報告もあります(Takahashi S, et al, J Infect Chemother 2005)。

クラミジア尿道炎とは?

クラミジア・トラコマティスが尿道に寄生し感染を起こす病気です。
男性の淋菌以外の尿道炎(非淋菌性尿道炎)の50%を占め最も多く、淋菌性尿道炎(俗にいう淋病)の20~30%にクラミジア尿道炎を合併しています(混合感染)。

クラミジア尿道炎の症状は?

感染後、1~3週間で発症するとされます(潜伏期間といいます)。
症状は軽い場合が多く、さらさらとした分泌物が尿道から出ることがありますが、その量は少量から中等量と少なく、排尿時の痛み(排尿時痛)も軽い場合が多いです。
軽い尿道の痒みや不快感だけで、ほぼ無症状に近い患者さんも少なくありません。

クラミジア尿道炎の検査は?

尿道炎の有無を、必ず尿検査で調べます。尿検査で白血球増加の有無を調べることで、診断だけでなく、治療効果を判定します。
必ず初尿(出始めの尿)を採取し、クラミジア菌の遺伝子の存在をPCR法で判定します(昔は綿棒を尿道内に入れ擦って検査していました、、)。
PCR法で+(プラス)の場合はクラミジア確定、-(マイナス)の場合は、クラミジア感染症を否定できます。血液検査で調べるクラミジア抗体検査は、感染の時期や治療効果を反映しないため行いません。

クラミジア尿道炎の治療は?

受診時にクラミジア尿道炎の可能性がある場合には、適切な抗生物質を処方し、飲んでいただきます。PCR検査結果が出るまで、5日間程度かかります。
PCRでクラミジアが+(陽性)の場合、通常、アジスロマイシンと呼ばれる抗生物質を1回内服していただくだけで、ほとんどの方は完治します。
しかしながら、稀に1回の治療で完全に治癒しない患者さんがいますので、必ず2~3週間後に再度PCR検査を実施し、-(マイナス)になったことを確認することが重要です。
初回治療で完全治癒しない場合には、抗生物質を変えて再度治療を行います。
クラミジア感染者の治療にあたっては、必ずパートナーのクラミジア感染の有無を調べることが、無症状感染者からの感染を防ぐために重要です。

淋菌感染症(淋病)

淋菌感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae: ナイセリア・ゴノレア)と呼ばれる細菌による感染症で、クラミジアと並び多く見られる性感染症です。
男性では尿道炎から精巣上体炎を起こすことがあり、女性では子宮頚管炎や卵管炎、骨盤内炎症性疾患とよばれる重症感染症を引き起こすことがあります。
1回の性交渉で淋菌感染症がうつる可能性は30%程度と考えられています。
近年は性行動の多様化により、咽頭感染が増加傾向です。特に、性器と咽頭に同時感染している患者さんでは、性器の淋菌が治癒しても、咽頭の淋菌が生きたまま残存している場合も少なくありません。

淋菌性尿道炎とは?

淋菌(ナイセリア・ゴノレア)が男性尿道に寄生し感染を起こす病気です。
淋菌性尿道炎患者の20~30%にクラミジア尿道炎を合併すると言われています(混合感染)。

淋菌性尿道炎の症状は?

感染後、2~7日で発症するとされ、クラミジア尿道炎と比較し潜伏期間が短いことが特徴です。
性交渉のあと2~3日で症状が出た場合、淋菌性尿道炎を疑います。淋菌性尿道炎の症状はクラミジアと較べると強く、多量の膿のような分泌物や激しい尿道炎症状(排尿時の痛み)が特徴で、時にペニス全体が真っ赤に腫れることもあります。

淋菌性尿道炎の検査は?

必ず初尿(出始めの尿)を用いた尿検査で尿道炎の有無を調べます。尿検査で尿中の白血球が増加していることを確認します。白血球の増加の有無は治癒判定にも用いることができます。
初尿を採取し、細菌培養検査あるいは淋菌の遺伝子を調べるPCR法のいずれかで判定します。血液検査を行うことはありません。

淋菌性尿道炎の治療は?

受診時に淋菌性尿道炎の可能性が疑われる場合には、適切な抗生物質を投与します。
通常、注射薬のセフトリアキソンと呼ばれる抗生物質の点滴、あるいはスペクチノマイシンと呼ばれる注射薬をお尻に筋肉注射して治療します。現在これらの注射薬で、ほとんどの淋菌性尿道炎は治癒させることが可能です。
しかしながら、稀に1回の治療で完全に治癒しない患者さんがいますので、必ず2~3週間後に再度PCR検査を実施し、-(マイナス)になったことを確認することが重要です。
初回治療で完全治癒しない場合には、抗生物質を変えて再度治療を行います。
淋菌感染者の治療にあたっては、必ずパートナーの淋菌感染の有無を調べることが重要です。

マイコプラズマ、ウレアプラズマ尿道炎

ウレアプラズマ、マイコプラズマ感染症とは?

これまで尿道炎と言えば、クラミジアと淋菌(淋病)が主でしたが、クラミジアでも淋病でもない尿道炎(非クラミジア非淋菌性尿道炎)の中で、ウレアプラズマ、マイコプラズマと呼ばれる細菌による尿道炎の存在が明らかになりました。マイコプラズマ、ウレアプラズマは性器と性器、または口腔と性器の直接的な接触を介して感染します。マイコプラズマ、ウレアプラズマにより男性は尿道炎や精巣上体炎、細菌性前立腺炎などの感染症を起こすことがあります。また口腔内に感染し、咽頭炎などの喉の炎症を起こすこともあります。

マイコプラズマ尿道炎の原因菌には、以下の2つが知られています。

・マイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)
・マイコプラズマ・ホミニス(M. hominis)

一方、ウレアプラズマ尿道炎の原因菌は以下の2つです。

・ウレアプラズマ・パルバム(U. parvum)
・ウレアプラズマ・ウレアリチカム(U. urealyticum)

ウレアプラズマ、マイコプラズマの症状は?

クラミジアや淋菌感染症と同様に、尿道の違和感・かゆみ、排尿時の違和感・痛み、時に尿道からの膿の分泌が出現しますが、無症状のことも少なくありません。マイコプラズマ・ジェニタリウム感染の場合には、粘々した多量の膿や亀頭や尿道の強い痛みなど、淋菌性尿道炎と似た症状が出ることがあります。マイコプラズマ、ウレアプラズマは、出生時または子宮内において、母体から赤ちゃんに垂直感染を起こすことがあり、その率は18~55%と報告されています。母体がマイコプラズマ、ウレアプラズマに感染すると、流産や早産の原因になることがあり、生まれたばかりの赤ちゃんに肺炎を引き起こすことが知られています。したがって、男性がマイコプラズマ、ウレアプラズマを保菌している場合には、パートナーへの感染を起こす可能性があり、注意が必要です。
精巣上体炎を起こした場合には、発熱や陰嚢の腫れや疼痛、急性前立腺炎が生じると、頻尿、残尿感、発熱、時に血尿が生じます。M. genitalium、M. hominis、U. urealyticumは”慢性前立腺炎”の原因になる可能性が報告されています。”慢性前立腺炎”は治療がなかなか難しい病気ですが、これらの菌が原因の可能性があります。なかなか症状が改善しない場合には、これら細菌の存在を念頭に入れた検査・治療を行うことがあります。

M. genitaliumの病原性はほぼ明確になっておりますが、ウレアプラズマに関してはいまだ不明点が多く、本当に診断、治療すべき細菌なのか、常在菌の1つではないのか、本当に病原性があるのか、など明確ではありません。しかしながら、ウレアプラズマが原因と考えられる尿道炎や女性の膀胱炎を時に経験しますし、ウレアプラズマが男性の前立腺炎、女性の不妊症、早産などの原因になる可能性も症例報告としては散見されます。私見としてはウレアプラズマの検査が必須とは思いませんが、何らかの症状の原因となっているのであれば、診断、治療は行うべきと思っています。

ウレアプラズマ、マイコプラズマの検査方法は?

クラミジアや淋菌と同様に”尿検査”で診断します(咽頭感染を疑う場合には”うがい液”で検査します)。出始めの尿(初尿)を採取していただき、菌の存在を調べます。細菌培養検査でマイコプラズマ、ウレアプラズマの検査を行うことも可能ですが、より確実な検査は細菌の遺伝子を同定するPCR検査です。これまでマイコプラズマ、ウレアプラズマのPCR検査は保険診療が認められていませんでしたが、2022年6月から、マイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)のPCR検査は膣トリコモナスPCR検査とセットで保険診療で行うことが可能になりました。しかしながら、ウレアプラズマに対するPCR検査は、いまだに保険診療が認められておらず、自由診療での検査が必要です自由診療のページを参照してください)。培養検査、PCR検査ともに、検査会社に外部委託して行いますので、結果が出るまで5-7日程度の日数が必要です。

注)上述のように、2022年6月からマイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)および膣トリコモナスPCR検査は保険診療で行うことが可能になりました。しかしながら適切な保険診療の観点から、初回診察時にクラミジア、淋菌に加えて、マイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)+膣トリコモナスPCR検査すべてを行うことは認められておりません。尿道炎の原因で最も多い細菌はクラミジアおよび淋菌ですので、初回診察時はまずはクラミジアおよび淋菌の検査を行い、最適な抗生物質を処方します。1週間以降に再診していただき、検査結果をお伝えするのと同時に尿検査で炎症反応が改善しているかを確認します。検査結果でクラミジアも淋菌も検出されない場合(非クラミジア非淋菌性尿道炎と言います)や、クラミジアあるいは淋菌が検出されたが抗生物質で尿の炎症が治癒しない場合には、マイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)あるいは膣トリコモナスが原因である可能性を考慮して、マイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)+膣トリコモナスPCR検査を保険診療で実施し診断いたします。

ウレアプラズマ、マイコプラズマの治療は?

マイコプラズマ、ウレアプラズマ感染症の治療の問題点は、これらの菌の薬剤耐性です。これらの菌は細胞壁という構造を持たないため、細胞壁破壊を目的としたペニシリン系やセファロスポリン系、カルバペネム系などの抗生物質は効果がありません。
マイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)には、従来クラミジア感染症と同様にアジスロマイシンの内服が有効とされていましたが、近年アジスロマイシン耐性のマイコプラズマの増加が問題視されています。マイコプラズマ・ホミニスやウレアプラズマに対しては、アジスロマイシンが有効なことも多いですが、無効の場合にはドキシサイクリン(ビブラマイシン®)やモキシフロキサシン(アベロックス®)、ミノサイクリン®などの抗生剤を用いて治療を行います。薬剤耐性が増えてきており、治療までに時間を要することがあります。

ウレアプラズマ、マイコプラズマ感染症と診断された場合には、パートナーの方の検査、治療が必要です。無症状で経過することも少なくないため、治癒しても再び性行為によって感染してしまうため(ピンポン感染)、時に抗生剤が効かないのか、ピンポン感染なのかわからない時があります。

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