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血精液症

精液に血が混じる!! :血精液症について

1.血精液症とは

単純に、「精液に血が混じる」状態を「血精液症」といいます。患者さんによっては、”精液が茶色だった”とか、”斑点状に赤いものが混じった”などで気が付くことがあります。出血したばかりの血液は赤いですが、時間とともに褐色調に変化します。精液の成分は精子、精嚢液、前立腺液です。精巣(睾丸)で作られた精子は、精巣上体(副睾丸)に運ばれ、精管を通り、前立腺の裏にある精嚢(せいのう)と呼ばれる袋に溜められます。溜められた精子は精嚢で精嚢液と混じり、射精現象が生じると精嚢の収縮によって、前立腺内部の射精管から尿道内に勢いよく射出されます。その際前立腺液と呼ばれる分泌液と混じります。射精の際には膀胱頸部(膀胱の出口)は閉じるメカニズムがあるため(射精後に尿がだしづらいのはこのためです)、精液は膀胱に逆流することなく、尿道から体外に射出することが可能になります。したがって、上記の経路、すなわち精巣、精巣上体、精管、精嚢、前立腺のどこかから出血をした時に、「精液に血が混じる」という現象が起こります。

2.血精液症の原因は?

精液の大部分は、精嚢(せいのう)および前立腺の分泌物で占められています。したがって、出血の原因の多くは精嚢または前立腺と考えられています。しかしながら多くの場合、どこから血が出ているのかを特定することは極めて困難です。例えば便に血が混じった場合には大腸内視鏡、血尿が出た場合には膀胱内視鏡を用いて出血部位を特定できることがありますが、精液の通り道を観察する内視鏡技術はいまだ存在しません。手術をしているとよくわかるのですが、精嚢も前立腺も多くの血管が張り巡らされた非常に血流の多い臓器です。勃起、射精現象の際には骨盤内に多量の血液が流入していることは容易に想像できますので、弱い血管が破れて出血を起こすことは十分あり得る事象と考えられます。

原因として、前立腺や精嚢(せいのう)周囲の血液のうっ滞や炎症、精管の炎症(精管炎)、精巣上体の炎症(精巣上体炎)、極めて稀に精巣腫瘍や前立腺がん、精嚢、精管の腫瘍、膀胱頸部(出口)の腫瘍などが考えられます。また稀ですが、クラミジア感染症などの性感染症が潜在しており、血精液症が生じることがあります。しかしながら実臨床では原因が特定できることはほとんど無く、原因は特に無い、あるいは特定できない、特発性血精液症がほとんどです。検査の際に、前立腺内に結石や嚢胞(のうほう)をみとめることがありますが、出血の原因と断定することは不可能です。患者さんからすれば「原因がわからない、はっきりしない」ことに不安を感じる方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合、命に関わる病気が潜んでいることはありません。適切な検査を行ったうえで、重大な病気が否定されれば、長期間にわたり出血が続くことはまずありませんので、日常生活、性行為も通常通りに行って頂ければと思います。

3.血精液症:必要な検査について

先述したように、多くの場合、どこから血が出ているのかを特定することは極めて困難です。したがって、外来では原因を特定するために様々な検査を行うというよりは、重大な病気、すわなち命に関わる病気を否定するための診察、検査が基本になります。

①陰部の診察(触診)

精巣(睾丸)・精巣上体、鼠径部(精管の走行位置)などの診察を行い、明らかな異常がないか確認します。精巣腫瘍は多くの場合精巣が硬い硬結として触れます。精巣上体に炎症があると(精巣上体炎)触診で痛みを感じたり硬結として触れることが多いです。鼠径部の触診を行うことで、リンパ節の腫れを診たり、精管に腫瘍がある場合に大きければ触れることがあります。

前立腺の診察である直腸診はすべての患者さんに行うことはありません。会陰部の圧痛を訴える患者さんに対しては、前立腺の炎症の診断のため行うことがあります。また前立腺癌の診断に直腸診は有用ですが、まずは後述するPSA検査(前立腺がんの腫瘍マーカー)を行うことがほとんどです(40歳未満の若年患者さんで前立腺がんを積極的に疑うことはまずありません)。

②尿検査

尿検査で尿の中に赤血球(赤い血液)、白血球(炎症細胞)が増えているか、を評価することが必須です。前立腺や精巣上体の細菌感染の場合には、尿検査で白血球の上昇をみることがあります。また前立腺や膀胱頸部(出口)からの出血の場合には、尿中の赤血球が増えることがあります。診断には、かならず排尿の出始めの「初尿」を採取し、調べることが必要です。

③腹部超音波検査、陰嚢(精巣)超音波検査(必要時)

腹部超音波検査で、膀胱頸部、前立腺、精嚢の異常を調べます。前立腺肥大の有無、前立腺結石や前立腺嚢胞(のうほう)の有無、精嚢の異常(腫瘍など)は超音波検査で診断可能です。前立腺に血液のうっ滞がある場合には前立腺周囲の血管が怒張して観察されることがあります。しかしながら、前立腺がんの有無は超音波検査で診断することは多くの場合困難です。PSA検査を行い異常をみとめる(通常4.0ng/mL以上)場合には、MRIを行い前立腺がんの有無を調べることが肝要です。

陰嚢超音波検査を同時に行うことは滅多にありません。診察(触診)で精巣や精巣上体の異常が疑われる場合には、陰嚢超音波検査で詳しく調べることが必要です。

④尿中細菌培養検査(必要時)

尿検査で白血球の上昇を認める場合には、前立腺などの細菌感染を疑います。尿中細菌培養検査を実施し、原因菌の特定を行います。また、尿検査で白血球の上昇があり、1カ月以内の性交渉がある場合には、クラミジアや淋菌のPCR検査を行うことがあります。細菌培養検査は、原因となる細菌を同定するだけでなく、その細菌に有効な抗生物質を特定することができます。

⑤腫瘍マーカー(前立腺がん:PSA検査、精巣腫瘍マーカー)(必要時)

極めてまれですが、血精液症で受診され、前立腺がんがみつかることがあります。したがって、一般的には血精液症で受診した50歳以上の患者さんには、前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAの血液検査を行うことが勧められます。稀ですが40歳代でみつかる前立腺がんもありますので、PSA検査を行うかどうかは、診療時に相談させていただきます。細菌感染症の存在が疑われる場合(尿中白血球が上昇している場合)にはPSAは正確な値を呈さないことが多く、感染症の治療後にチェックを行うことが推奨されます。触診や精巣超音波検査で精巣腫瘍の存在が疑われる場合には、精巣腫瘍の腫瘍マーカーを測定することがあります。すべての患者さんに精巣腫瘍マーカーの血液検査を行うことはありません。

⑥MRI検査(必要時)

ずべての患者さんに初回からMRI検査を行うことはありません。ただし、鼠径部に腫瘍が疑われる場合、PSAが高値で前立腺がんが疑われる場合、長期間に渡り血精液症が持続する場合には、MRI検査を行い詳細に骨盤部を調べることがあります。ただし、MRIで血精液症の原因が特定できることはほとんどありません。

 

以上の検査を患者さん個々の年齢、症状、出血の持続期間などを考慮し行っていきます。

 

4.血精液症:治療法は?

上述の検査で、細菌感染症(細菌性前立腺炎や精巣上体炎、クラミジア尿道炎など)が疑われる場合には適切な抗生物質を内服していただきます。前立腺の炎症や血液のうっ滞が疑われる場合には、慢性前立腺炎に準じた薬物治療を行うことがあります。各種検査で大きな異常をみとめない場合には、特に治療をおこなわず経過観察させていただきます。精液は精嚢内に貯留されているため、血精液症は多くの場合は、1-2ヶ月の間持続することが多いですが、その後自然に消失することがほとんどです。出血が長期間持続する場合や、出血が重度の場合には、止血剤を内服して頂く場合があります。

 

血精液症はほとんどの場合重大な病気が原因であることはありません。しかしながら、きわめて稀に前立腺がんなどの重大な病気や、感染症が発見されることがあります。精液に血が混じった場合には放置せず、「中野駅前ごんどう泌尿器科」にお気軽にご相談ください。適切な診断を行い、症状が早く改善するよう最善を尽くさせていただきます。

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