尿失禁（尿漏れ）について
①腹圧性尿失禁とは？
腹圧性尿失禁とは、お腹に力が入った時におこる尿漏れのことです。具体的には、
- 咳やくしゃみをした時
- ジャンプした時、走った時
- 重い荷物を持った時
- 大笑いした時
などに尿が漏れてしまうことを言います。
腹圧性尿失禁は女性特有の症状です。男性では前立腺の手術後を除けば腹圧性尿失禁が起きることはまずありません。女性は男性と比較し尿道が短いこと、前立腺が無く膀胱に溜まった尿を尿道括約筋が直接支えなければならないことから、加齢とともに尿道括約筋が弱ると腹圧性尿失禁が起きてしまいます。
「腹圧性尿失禁」は40歳以上の女性の40％以上の方が経験すると言われおり、非常に頻度が高いことがわかっていますが、実際に病院を受診する女性患者さんは10％以下と言われています。やはり、泌尿器科を受診するのを敬遠する方が多いのだと思います。
腹圧性尿失禁は、生活の質を低下させる症状です。歳のせいとあきらめずに、そして恥ずかしがらずに是非泌尿器科を受診してください。
多くの患者さんは骨盤底筋体操やお薬の治療で症状が改善します。「中野駅前ごんどう泌尿器科」では女性の患者様も受診しやすいよう、「女性専用待合室」を作りましたので安心して受診していただけます。尿漏れでお悩みの方は是非一度ご相談ください。
②尿失禁の種類について
尿失禁には以下の３つの種類があります
１）腹圧性尿失禁
普段は漏れないのですが、お腹に力が入ったときに起きる尿漏れのことを言います。咳やくしゃみをした時、重い荷物を持った時、ジャンプをした時、大笑いした時など、に起きる尿漏れです。加齢とともに女性ホルモンが低下し尿道括約筋が弱くなること、また出産によって尿道括約筋が緩むことなどによって出現します。
全尿失禁患者さんの50％がこの腹圧性尿失禁であると言われており、一番多い尿失禁です。尿が溜まっているときにチョロッと尿が漏れるのが特徴です。通常は大量に漏れることはありません。
２）切迫性尿失禁
急に強い尿意が起こり、我慢できずに尿が漏れてしまう症状です。食器洗いなど水仕事をすると漏れてしまうという方もいます。膀胱の神経過敏（過活動膀胱）によって、膀胱が無意識に収縮し膀胱内の圧が上昇することが原因です。過活動膀胱については「過活動膀胱について」を参照してください。
３）混合性尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が組み合わさった尿失禁のことを言います。全尿失禁の36％と、頻度が多い尿失禁です。
③尿失禁の診断について
適切な治療を行うためには、あなたの尿漏れがどのタイプの尿漏れなのかを診断することがとても大切です。具体的には以下の方法で診断します。
１）問診票
問診票に記入して頂きます。どの症状が最も強いのか、また尿失禁の重症度を調べることができます。
２）排尿日誌
1日の排尿の具合をご自身で記載していただきます。具体的には、1回の排尿量、排尿回数、昼間尿量、夜間尿量などがわかります。
３）尿検査
尿漏れの原因となるような、尿路感染症の有無や血尿などの異常の有無を調べます。
４）残尿測定検査、尿流量検査
排尿後に尿が残っていないか、また尿を勢いを測定することで、膀胱機能を調べることができます。
５）腹部超音波検査
膀胱に結石や腫瘍など異常が無いかを調べます。また大きな子宮筋腫など膀胱を圧迫するような原因がないか調べることができます。
６）その他
パッドテスト（どの程度の量の漏れがあるのかを調べる検査です）を行い、尿漏れの重症度を調べることがあります。
④腹圧性尿失禁の治療について
１）行動療法
軽症の場合は「骨盤底筋体操」を継続的に行うことで改善が期待できます。骨盤底筋訓練は腹筋に力が入らないようにしながら膣や肛門を締める体操で、継続的に行うことで骨盤底筋が厚くなり、尿道括約筋が強くなることが期待できます。また先述したように便秘や肥満は尿漏れのリスクとなりますので、過剰なカロリー摂取は控え、減量すること、適度な運動をすること、便秘を改善することなどを徹底します。
２）薬物療法
腹圧性尿失禁に対しては、β2アドレナリン受容体刺激薬であるクレンブテロール塩酸塩（スペロペント®）を用いることができます。スピロペント®内服で尿道括約筋の収縮力が上がり症状が改善する可能性があります。
３）行動療法、薬物治療で症状が改善しない場合、重症の場合には手術治療を考慮します。
TVTと呼ばれる尿道をメッシュで吊り上げる手術が一般的です。手術治療が適切と判断した場合には、経験豊富な医療機関を紹介させていただきます。
⑤切迫性尿失禁の治療について
切迫性尿失禁では、腹圧性尿失禁の治療と同様、行動療法と薬物療法を組み合わせて治療します。
１）行動療法
「骨盤底筋体操」を継続的に行うことで改善が期待できます。骨盤底筋訓練は腹筋に力が入らないようにしながら膣や肛門を締める体操で、継続的に行うことで骨盤底筋が厚くなり、尿道括約筋が強くなることが期待できます。また先述したように便秘や肥満は尿漏れのリスクとなりますので、過剰なカロリー摂取は控え、減量すること、適度な運動をすること、便秘を改善することなどを徹底します。
２）薬物治療
- 抗コリン薬：膀胱が勝手に収縮するのを抑制します。ベシケア®、トビエース®、ステーブラ®、ウリトス®などの薬を使用します。膀胱の筋肉が勝手に収縮してしまうのを抑えるので、尿意切迫感が軽減し、膀胱にしっかりと尿を溜められるようになります。まれに口渇や便秘といった副作用が出ることがあります。
- β3受容体作動薬（ベタニス®、ベオーバ®）：膀胱の筋肉を緩めることで、膀胱が勝手に収縮しずらくなり、尿をためられるようにする薬です。抗コリン薬と比較し口渇や便秘といった副作用がでにくく、使いやすい薬です。
３）その他
- 電気刺激療法・磁気刺激療法は腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁に対する有効性が示されています。また仙骨神経刺激治療（Sacral NeuroModulation:SNM） は薬物治療によって改善されない難治性過活動膀胱に伴う尿失禁に有効です。
- ボツリヌス毒素の膀胱壁注入治療：尿道から内視鏡を挿入して膀胱壁にボツリヌス毒素を注入する治療です。膀胱壁に注入されたボツリヌス毒素が膀胱の筋肉を緩め、膀胱の勝手な収縮を抑えてくれます。日本でも2020年より保険適応となり行うことができます。
尿失禁は女性に多い病気で、実際はかなり多くの女性の方が経験していると予想されます。いつも尿漏れを気にして生活をするのは気持ちのよいことではありません。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁は、行動療法、薬物治療で改善することが多いです。ぜひ中野駅前ごんどう泌尿器科にお気軽にご相談ください。